Albatross on the figurehead 〜羊頭の上のアホウドリ

   BMP7314.gif 60年目の宝箱 ABMP7314.gif 〜ドリー夢小説
 

 
          



 一見するとスレンダーだけれど、なかなかメリハリのあるプロポーションをした、利発そうな面立ちのそりゃあチャーミングな女の子は、やっぱり…先に現れた二人の若い衆たちの連れであったらしく。泊まる予定の宿が満室だったので、船で寝ることになったと伝えるべく、港町の中で仲間たちを探して探して、最後の一人の剣士さんだけが見つからなかったのでと、捜索範囲を広げてここまで登って来たのだとかで。
「最初は昼に食堂前で一旦集合って言ってたのによ。」
「なのにゾロだけ、なかなか帰って来ねぇんだもん。」
「刀の研ぎ屋を探しにって出てってさ。」
「そいでチョッパーと一緒に匂いで探してたんだぞ?」
「呑気にもこんなトコに いやがってよ。」
「そーだ、そーだ。」
 左右から口々に言って大きな体躯の剣士さんに詰め寄るのは、後から合流したお仲間さんたちで。お元気そうな男の子が3人に、大人っぽい女性がもう一人。なかなかユニークな陣営だわね。それにしても、
「刀の研ぎ屋? じゃあ、あたしんチに来るとこだったんだ。」
 なのに…さっきは“昼寝の邪魔しやがって”なんて言いながら登場しなかったか? この剣士さん。キョトンとしちゃったあたしへ、
「そりゃしょうがないさ。」
「ルフィ〜〜〜。」
 おいこらと制止しようとしたご本人を尻目に、麦ワラ帽子のよく似合う、ひょろっとした男の子が愉しそうに笑いながら説明してくれたところによると。この人、こんなカッコいいのに、実は実は…物凄い方向音痴なんだって。
(笑) 初めての土地であろうと慣れていようと関係なく、道をちゃんと教えられていても どういう訳だか。一番の遠回りをするか、若しくは真逆へ進むか。わざとじゃないのかって思えるくらいのダイナミックさで、一本道でもあっさり“迷子”になってしまう人なんだそうで。…そっか。すごい太々しい登場だったけど、実はあれってあの時点で迷子になっていたのか。(苦笑) 此処まで来てたんなら、そのまま上がってきゃあ もう一息だったのにね。仕方がないからって、あの空き地で不貞寝するつもりだったのかな?
「…まま、人には何かしら必ず欠陥があって、それでバランスが取れてるもんだって言うしね。」
 気にするこたないよって、そう言うとね、何とも言えないお顔になって。それから、
「〜〜〜。///////
 ちょこっと下唇を突き出しながら、仄かに赤くなったんだよ? 剣士さんvv こういう可愛げのある人って好きだなぁvv
「凄げぇ〜、ゾロんこと言い負かしたぞ、この子。」
 え? そんな凄いことなの? …っていうか。え?とそっちを向くと、あわあわと緋色の山高帽子を引っ張り下げた小さな坊や。何よ、今更照れてるの?と、お顔を覗き込んだらば、
「あら、あんた。獣人だね? ヒトヒトの実を食べたの?」
 訊くと、ふえぇって顔を背けようとしたのを途中でぴたりと止めた。
「こ、怖くないのか?」
「? なんで?」
 そぉっとお顔を上げた、青いお鼻の小さなトナカイさん。変なことを言い出すのね。
「だって…珍しくはないし。ウチの島にも何人かいるわよ?」
 ゾォン系の獣人には、それぞれの種族なりの特殊な力と、何と言っても動物の言葉が判るって利点があるからね。空模様とか風や潮のご機嫌、そういうのに敏感だし大地の声も聞けるから、どこの村でも重宝がられているわよと言えば、此処じゃあ そうなんだ…と感心されちゃった。え? それって不思議なことなの?
「そもそも、魚人だってヒトヒトの実を食べた祖先たちから発展したって説があるくらいなんだし。」
 そうと付け足すと、今度はナミさんて呼ばれてた女の子が“え?”と驚いて見せる。
「人が更に進化したもの? どこの馬鹿がそんなこと言ったの? 第一、それならどうして既往種っぽい魚人ばかりなのよ。人に水棲能力がついて進化したってんならば、まずは似たような姿、似たような機能のものが“ベース”の種として一杯いる筈でしょ? なのに実際は、サメとかタコとかエイとか、もう既にいるような魚のそっくりさんばっかじゃない。」
「………そういえば。」
 何だか呆然としてたけど、お〜い、大丈夫? お顔の前で手を振っていると、
「これ、。お客様に何してますか。」
 あやや、叱られちゃった。//////
「まあまあ、お茶でも飲んで落ち着いて。」
 奥の台所から、母さんが大きめのお盆にお茶の用意を載せて運んで来たんだけれど。すかさず、サンジさんというあの役者さんのような男の人が立ち上がり、
「お手伝いしますよ。」
 そりゃあ手慣れた様子にて、母さんの手からふわりとお盆を取り上げ、皆でついてた丸くて大きな卓まで運んでくるお手並みの見事さよ。しかもしかも、まるで町の大きなレストランのお給仕さんみたいに、そりゃあ洗練された動きでお茶を淹れて配ってしまって。
「…あ、うそ。美味しいvv
 急須に入ってたのは間違いなくいつものお茶なのに、どうしてだろう。深みが増してて香りも良いの。凄いなぁ、お茶って上手に淹れればこんなにも味が違うんだ。美味しいお茶で暖かくもほっこりと和んだところで、

  「で、んチって何屋さんなんだ?」

 ルフィって子があらためて訊いて…周囲の面々が半分ほど、卓袱台の上へと見事に突っ伏した。いいノリだなぁ、この人たち♪
「あんたねぇ、人の話を聞いてたの?」
 ご本人のお宅にまでお邪魔していて、しかもさっきのやり取りの中にもそれをなぞった言葉がしっかりとあったってのに…と。身内ながら恥ずかしい奴めって言いたげにお顔が赤くなってるナミさんへ、サンジさんが宥めるように執り成した。
「まぁま、ナミさん。こいつがこうなのは今に始まったこっちゃなし。」
 あははvv そうなんだ。
「ウチは鍛冶屋なんだよ。刀や剣、あと、包丁なんかも作ってるし、鋳直しや研ぎ直しも請け負ってる。」
 田舎の鍛冶屋だって馬鹿にしたもんじゃないんだからね。これでも昔はここいら海域全般に出没したっていう海賊相手の“群島自警団”へっていう剣を全部、一手に作って納めてた、そりゃあ由緒ある家柄なんだ。裏の丘には当時の英雄たちを祀った祠
ほこらがあって、そこを神職に成り代わってお守りするのもウチの家系の仕事なんだからね。自慢じゃないけどと言いつつ、ちょびっと自慢げに話したらば、
「凄げぇ〜vv
 ルフィがワクワクって身を乗り出して来た。
んチって楽器屋かと思ってたけど、そっか鍛冶屋さんだったか。」

  ――― はあ? 楽器屋?

「だってよ、さっきから“カンコン、キンコン”って鐘鳴らしててよ。」
 それもよく響くいい音だもんだからサ、これはてっきりって思った…と。楽しそうに言ったルフィの傍らで、ウソップって子とサンジさんナミさんが“はぁあ”と脱力して見せ、チョッパーは“え?え?”とばかり、力の抜けた仲間にキョトンとしてる。ルフィと同じで、いい音には違いないって思ってたんでしょね。そして…ゾロさんは、口許にうっすらと渋い笑みを浮かべてそれから、畳み敷きの床から立ち上がると、襖を開いてその音がする方へと向かってった。仕事場に行ったんだな。強そうな人だったけど、どんな刀をどう使って来た人なんだろ。ウチは…というか爺ちゃんは、偉そうにもお客を選ぶからなぁ。ウチではまだまだ現役で頭領のお爺ちゃんと、若頭領の父さんが若い衆と槌(つち)を振るってる。あとお兄ちゃんもいて、爺ちゃんや父さんの跡を継ぐ気は満々なんだけど…。

  「そういや、ちゃん。さっきの奴らは一体何者だったんだ?」

 あんな人数に囲まれてて、何か絡まれてたみたいだったけど。大会がどうのとか言ってなかったか? 誰なんだ? あいつら…とサンジさんが訊いた。軽く一蹴しちゃった後は“全く眼中にありゃしません”という態度だった割に、ちゃんと見てたんだ、やっぱり。何だかややこしい乱入をしてくれたとはいえ、そのお陰で鬱陶しいのから解放されたには違いないんだし、それに…黙ってたって明日にでもなりゃ分かることだ。卓袱台についてたお母さんに目顔で“言っちゃうよ?”と前置いてから、
「港のはずれに大きな屋敷を構えてる、成金の自称“貿易商”の御曹司とその取り巻きたちよ。」
 全くの他人には違いないけど、同じ島の住人だってのさえ恥ずかしくなるような奴のこと、この人たちへも話すことにした。
「自称“貿易商”?」
 何だか曖昧な肩書きだと感じたんだろうね。小首を傾げた彼らへ、ちょいと大仰に肩をすくめて見せて、
「元は港の外れで外来の船を相手に小商いをしていた家だったものが、どこやらの犯罪結社と手を結んでの密輸でここ十数年の間に一気に肥え太ったって噂もあるよな連中でね。でも、その結社が最近になって海軍の摘発受けて壊滅したとかで、もともと商売の方は片手間だったらしいから、どんどんと左前になって来てるらしいんだけど。」
 そうと付け足してやった。だってホントに、いつの間にか居着いてたってクチの連中なんだそうだもの。昔々に襲い来た…けど自警団に追い払われたっていう海賊の、下っ端あたりが逃げ損ねて居着いたんじゃないのかって話もあるほどだから、どれほど忌み嫌われてる連中かよね。遠い先祖なんか関係ないだろうって言えないくらい、そりゃあ柄の悪い連中で。今の代の当主は、あっちこっちから借金の証文を集めちゃあ、嫌がらせや脅しで利子を何十倍も吹っかけての強引な取り立てをして、事業の最初の資金を作ったっていう極悪人だし。あの御曹司とやらも、外の海からのお客を相手に捕まえちゃあ、酒場で暴れる、路地裏で脅しのたかりのっていう悪事をしまくる。よくもまあここまで阿漕
あこぎだとはって誰もが呆れるほどの立派な“鼻つまみ者”たちだから始末に負えないってもんでね。しかもしかも、
「ウチの地所になってるあの丘に用向きがあるらしいのよね。」
 いい加減にしないと海軍経由で世界政府の国際審判所へ掛け合うよって、去年の暮れごろに町中の意志としての議決を固めて持ってたらさ、ふっと大人しくなったその次に、そんなことを急に言い出してね。
「春先からずっと、譲れの売れのって喧しくってさ。大方、どっか別の島のリゾート開発か何かの業者にでも、儲け話を持ちかけられたんじゃないのかって話してたトコ。」
 さすがに居辛くなったから、大きなお金を作って、後はサラバとトンズラしよって魂胆じゃないのかって踏んでるんだけれどね。勿論そんな話、聞けるもんじゃない。富豪ってほどじゃあないけどお金に不自由はしてないし、お断りですって振り払い続けていたら、それがサ。恐ろしいことにって言うか罰当たりなことに、その丘の頂きにある“スルタンの祠”のご神体がいつの間にか盗み出されててサ。
「スルタンの祠…。」
 そ。さっき言った、昔の自警団で活躍したっていう、伝説の英雄たちを祀ってる祠よ。そこにはね、一番の腕っ節と人望とで数々の活躍が今でも謳われてる大スルタンの像や剣も納められてたんだけど、いつの間にやらご神体の“黄金の剣”が盗まれてたの。しかも、それが発覚して さして日も経たない内に、この島へ保養に来てた金持ちが裏のルートで手に入れたって言って来た。自分は盗んだ本人じゃない。だから、いくら“盗まれたもんだ”って言われても、タダで返す訳にはいかないなんて言い出してサ。自分が買った値で買い戻せなんて言い立てた…その額がまた法外で。ただ、

  「明日催される剣術大会の優勝賞金と同じだってのが…さ。
   芸のない作為が見え見えだってのよね。」
  「…う〜ん。」
  「それは確かに…。」

 ああ、そうそう。剣術大会ってのは毎年催されてるこの島の年中行事で、今年は“60回目”っていう特別な節目の大会だから、積み立ててたお金に港の利用料も多かったのでって色がついて、優勝賞金は史上最高額の500万ベリーなの。…でもさ、確実を帰すのなら、そんなもんでは追っつかない金額にしとけばいいのにと、あたしでさえ思ったんだけど。
「そうしちゃうとさすがに、公的な、例えば警察や海軍の直轄する裁判所へ訴え出られちゃうと思ったんでしょうね。」
 綺麗な手のひらの中に丸ぁるい湯飲みを愛でながら、ロビンさんが静かなお声でそう言った。返す手段が全く無い訳ではないとしておけば、その“一縷
いちるの望み”にすがってみるかもしれないわと続けて、
「そうなれば、何日間以内に手続きを終えて訴えなきゃいけないっていう規定を、知らない間に削れるでしょう?」
「そんなの ずるい〜〜〜。」
 っていうか、訴えれば何とかなるの?
「海域によって法律は違うわ。この辺りでは盗品と知らなきゃ買い手は罪に問われないみたいだけれど、世界政府直轄の海軍の法規では確かそうは行かなかった筈よ?」
 少なくとも、どこの故買屋から手に入れたかっていう尋問を受けることになるだろうしね。だから、そんな手にせざるを得なかったのではって言われて、そっかって、その時は納得したけれど。後で聞いたら…そういうお宝は持ち主に戻るんじゃなくて、海軍が一旦強制没収しちゃうんだって。海賊や故買屋のつながりとか流通ルート撲滅のための資料になるからで、手元に帰って来るまで随分と歳月がかかるのだとか。まあ…ウチのの場合は、訳の分からない所に持ち出されるよか、その方がずっと助かる訳で。
「ともあれ、お金で何とかなりますよって手立ても、相手は一応は言って来た訳ね。」
 うんうんとナミさんが頷き、
「で。もしも、その大会に勝てなきゃ…どうするの?」
 そうと訊かれて、
「そりゃあ…。」
 悔しい話だけれど、金策に駆け回って…足りなきゃ、
「そっか。丘を売ることになるのかも知れないのね。」
 そこにある祠のご神体のためにその地所を売るなんてのは順番的には本末転倒だけど、でも…管理不行き届きってことになるには違いなく。祠の周辺だけは残してって売り方になるのかも。何が何やらって憤懣だったのが、筋道立てて説明されて…ますます周到さに腹が立って来た。
「…あの坊っちゃんやタヌキ親父にしては、結構手の込んだことを考えてた訳だ。」
 悪党とは言え、勢いに任せてるだけの小悪党だって高を括ってたのが、油断というか仇になったのかしらね。あらためてムカムカと腹を立ててるあたしへ、
「手を組んだ相手らしい、そのよそ者のお金持ちっていうのが“知恵袋”なのかもしれないわね?」
 ロビンさんはそうと付け足す。だって、町や村中からの弾劾を受けていたんでしょう? 血気盛んなインテリ層がイデオロギーの爆発や啓蒙啓発運動の結果として、法的根拠を掲げつつ蜂起したんならともかくも…って。なんか難しいぞ、お姉様。
(苦笑)
「ずっと静かに穏やかにって暮らして来た善良な人々が一致団結して立ち上がるのって、理屈で言うほど簡単なことじゃないわ。」
 何たって日々の生活がある。それに集中出来なくなるような面倒ごとが長々と続くのはかなわないからって、自分たちが我慢すればって風に置き換えて、大概のことには目を瞑るものよ。そこに付け込むのが所謂“極道”だってのに、もう黙ってられないって立ち上がった方々に押され負けして手を変えて来ただなんて。

  「小者には違いないわよ、そんな連中。」

 あははvv 気持ちいいほどすっぱり言いはる。
(苦笑) そんなロビンさんの傍から、ナミさんが訊いたのが、
「お兄さんが怪我をしたとか言ってたのは? それもそれに関係しているの?」
 ああ、うん。あのね。明け方の薄暗さの中に誰かが潜んでて、投げられた網に鉤のついたロープを搦めたから、岩場で船が転覆しちゃって…お兄ちゃんは腕を折っちゃったの。魚が暴れたなんてせいじゃない、証拠の鉤だってこっちに残っているんだけどもね。そんなもの、市場で売ってて誰にだって買える代物だからって言い抜けられるのがオチだし、それより何より、むかっ腹の立つあのお坊ちゃんが自分の手でやったんじゃないんだろってのは こっちにも分かってる。そんなに言うならと、実行犯の子飼いの誰ぞを突き出して終わりだろう。
「なあなあ、。」
 なあに? チョッパー。
「そこまでしてでも欲しいって思うようなもんが、その丘にはあるの?」
「祠にあったご神体は金さえ積めば返すって言ってんだろ? ってことは、それより高価なものってことか?」
 黄金の剣だってんだろ? 結構な値がつくだろうに、それを惜しまねぇってんだ。そりゃあ凄いお宝とか秘密とか…って、ウソップがう〜んと想像を巡らせ始めたんだけれど、

  「さあ、どうなのかしら。」
  「はい?」×@

 あ、ううん。今更 皆さんを信用してないからって言葉を濁したんじゃなくってさ。
「あたしたちも、よくは知らないのよ。」
「はい?」
「それって?」
「だから…。」
 あのその、うっとね。その祠っていうのはね? あたしもよくは知らないんだけれど、何だか不思議な仕掛けがあるらしくって。60年に一度、そこの真下の地下にあるっていう“石室”へと続く岩戸が開くの。そりゃあ大きな一枚岩で、しかもそのまま数mほどの通路になるほど分厚い岩だから、丘が丸ごとパカッて開く規模のご開帳。なもんだから、その時以外はどんな方法でも開けられないの。丘ごとどころじゃない、島ごと吹き飛ばす勢いで掘り返しでもしない限りはね。その仕掛けを頼りにして、代々の村長さんとか宮司さんとかが、その時代時代の最も尊いお宝を収めたって話もないではないんだけれど、
「最も尊いお宝っ?!」
「は、はいっ?」
 あ、今度はあたしが訊き返す番になっちゃった。だって、ナミさんたら、いきなり瞳が輝き始めたんですもの。え? 冗談抜きに、直視出来ないほどキラキラと眩しく輝くこともあったって?(でっカイお宝のお話の時ですな。/笑)
「祠の縁起書とかにも具体的な記述はないから、一体何が収められているやら。でもね、いくら村長や宮司さんといったって、こんなのんびりした島のですもの。そんな大それたお宝をそうそう手に入れられると思います?」
 遠い昔からあったものなら、それこそ“大切になさい”とか“ご開帳ごとに中身を確認しなさい”とか何とか、それなりの記載がある筈なのにそれも全く残ってないと来ては、
「やっぱり大したもんじゃないんだろって事になってるのよ。」
 なのに不思議よねと首を傾げて見せると、
「…でも、相手はそうじゃない。黄金の剣も結構な金額の賞金さえ要らないと思ってるんでしょう? そんなお金を立て替えてやるって仕組んででさえ、権利をほしい、石室に入りたいって思ってる。」
 ロビンさんがそんな風に切り返して来た。
「そっか。でも…。」
 やっぱり信じ難いんだけどと首を傾げてると、

  「外の人へは何かしらの情報が流れていたのかもね。」
  「ロビン?」

 何だか…この人って凄いなぁ。何でこうもすらすらと、何でも見透かしてしまえるんだろか。
「例えば。隠した張本人が、すぐにもこの島から離れていたら? 隠したことさえ隠そうとして外へ遠ざかり、遠い外国で子や孫、若しくは恋人へ、そこに“宝”を隠したと言い残したのなら。間近にいたこの島の人たちには欠片だって伝わらなくたって不思議ではない。」
「そっか…間近な人にこそ知られてはいけないのよ。掘り返される恐れはなくても、監視されちゃうから。」
 何たって、60年間は誰が何をしたって開かないと分かってるんだしね。手は出せないけど、時が来るまでただ見張ってりゃいいんだし。そうなると、成程、間近にいる人の方が断然有利だから、情報は残しておけないってもんだわ。
「その、外から来たっていう資産家が怪しいわね。盗品のご神体を押さえてるところといい、ちょうどご開帳って時にこの島へ来たって事といい、いかにもな鍵を握り過ぎてる。もしかして隠したっていう本人から直に話を聞いたの、その人なのかもね。」
 そして、あの忌ま忌ましい成金一家と手を組んだってこと? ななな、なんてことでしょうかっ!

  「ちゃん、落ち着いて。」

 だってっ! 頭を冷やすためにも、ここで“続く”です。
(おいおい)






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  *なんか説明ばっかになっちゃいましたね。
   まま、ここいらは設定の基礎固めということで。